インターネット上や書店で見かけ、気になっていた1冊。
バーカウンターを兼ね備えた小さなプラネタリウムが舞台の物語。
そんな三軒茶屋星座館を営む和馬のもとに弟の創馬が10年ぶりに小学生の娘の月子を連れてふらりとやってくる。
和馬のこともお父さんと呼ぶ月子に戸惑いながらも、本を読み聞かせるように和馬は月子に星座の成り立ちを語り聞かせる。
和馬が月子やお客さんに対して、砕けた言葉でギリシャ神話を語るのですが、神様の性格までもいい感じにラフに語られていて分かりやすく、今すぐ誰かに星座の話をしたくて仕方がないです。
気になってはいたものの、なかなか調べるというまでには至らず放ったらかしになっていたので、私にとってはお話を楽しめるだけでなく、とても為になる1冊でした。
オリオン座がさそり座から逃げている、程度しか知らず、あまつさえオリオンはさそりに殺されたと思っていたので、和馬が語るギリシャ神話を本当にわくわくしながら読み進めてしまいました。
作中でも、
ギリシャ神話に出てくる神様は嫉妬するし、嘘をつくし、やたらと人間くさいんだよな
と言われているように、お話を読んでいる限りでは美男美女揃いなのに残念な神様ばかり。
そんなギリシャ神話に似通った人間関係のトラブルが和馬の周りでも起こってゆく。
オリオン座、おおいぬ座のお話に関しては、本当に神話の神様よろしくダメな大人たちが行き場を無くしてダメになってゆく様が描かれていて、少しもやもやとしてしまう。
神話みたいな超常的な終わりはなく、解決に「仕方のなさ」が介在するような、そんなもやもや感。
……もやもやって、悪い意味じゃないです。
月子があることをきっかけに行方不明になってしまい全員で探すお話。
多分、そんな風に最後のお話がすごくいいと思えたのは、それまでのもやもやの積み重ねがきっとあったからで、過去にいろいろな物を抱えた登場人物がみんな同じような眼差しを月子に向けるのがとても優しい。
どの話も、良くも悪くも人と人の繋がりの物語で、誰かを星の綺麗なところに連れ出して覚えたての現代語訳ギリシャ神話を話したくなる。
来月には、また文庫という形で続編が読めるみたいなので、楽しみ。