ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『エチュード春一番』

エチュード春一番 第一曲 子犬のプレリュード』  荻原規子

エチュード春一番 第一曲 小犬のプレリュード (講談社タイガ)


勾玉三部作」や「西の善き魔女」、「RDG レッドデータガール」で有名な荻原規子さんの講談社タイガ作品。
荻原規子さんの作品を読むのは今回が初めてになります。

こうしていろんな作家さんの作品を初めて手に取る度に思うのですが、過去に出された有名なシリーズ作品が読みたくてたまらない……。
いや、まあ、だったら読めばいいのですが、私には他にも読まねばならぬ作品が云々。



私の読んできたキャラクター小説には、主人公にとって気安い存在として神様が登場する作品も少なくないのですが、今回の神様は表紙にも描かれているパピヨン
八百万の神様で今はパピヨンの姿をしているものの、後々は人間になりたくてその時のために人の生活を見ながら勉強しているのだという。

主人公の美綾は、大学の入学を機にロンドンへ引っ越す家族と別れ、大きな家に一人暮らしをすることになる。
ひょんなことから出会ったパピヨンが古風な言葉で話し始めたことに驚きながらも、家族に内緒で一緒に暮らすことになる。

このパピヨン……なんというかとてもふてぶてしくて、テレビも見るし端末で読書もする。
神様と思えば理解できなくもないのですが、見た目がパピヨンなので何をするにも滑稽に思えてしまう。



そんな犬との新生活を始めた美綾は大学でかつての同級生2人と小学校ぶりに再会する。
その2人から美綾は、過去に起こった共通の同級生の事故死について話をされるが、2人の話の温度や細部がどうも噛み合わない。


ふとその違いが少し気になる美綾は、その件について調べていくことになるが、いつの間にか事故死をした同級生の幽霊騒動に巻き込まれ、身の回りでも怪事件が起こり始めてしまう。
そういうことに詳しいのではないかと、パピヨンに相談を持ちかけながら真相を探っていく。



この作品、最後の最後まで起こる事件が本当に心霊現象なのか、もしくは、人によるものなのか、どちらにも取ることができて、とても落ち着かず不安な気持ちで読み進めてしまいました。
心霊現象ならば心霊現象と、人によるものならば人によるもの、と割り切ることができれば腰を据えて読み進めることができたのですが、その曖昧さからくる居心地の悪さが良い意味でスパイスになって、ページをめくる手が止まりませんでした。
なんていうか、自分1人だけひどく場違いな所にいて、早く移動したいと感じてしまう時の居心地の悪さに似ている。


結末も結末で、少し後を引く終わり方で心の端がほんのり冷える。


神様と名乗りながら、モノクロと名付けられたパピヨンの的外れでぽんこつっぷりが少し救いだったりもする。
……飼いたいとは思いませんが(笑)


今後、本格的にモノクロの人間界への進出が成されるのかも含め、続きが楽しみです。