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ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『汚れた赤を恋と呼ぶんだ』

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『汚れた赤を恋と呼ぶんだ』  河野裕

 

汚れた赤を恋と呼ぶんだ (新潮文庫)

 

 
『いなくなれ、群青』
『その白さえ嘘だとしても』
に引き続き、階段島シリーズ第3弾。
 
 
舞台は階段島を一旦離れて、現実世界を生きる七草くんと真辺さんのお話でした。
 
 
何故、七草くんと真辺さんは自分を捨てたのか。
そして、その後彼らは何を思うのか。
 
 
 
※以下、ネタバレ気にせず感想を書いています。未読の方はご注意ください。
 
 
 
 
 
 
 
まずは、新しい登場人物の安達さんについて。
七草くんと本当の自分について話をする場面がとてもすき。
そして魔女を巡って、七草くんを惑わせることになる。
今後、大きくお話に関わって行きそうでとても目が離せないです。
私が今まで読んできた河野さんの物語の中で、完全な悪人がいた記憶がないので、きっと、彼女の不穏な行動にも何か理由があると思うのです。
 
 
階段で自分と話をする場面だったり、泣きぼくろの魔女が登場する場面だったり、前作を通して見覚えのある出来事が少しずつでてきて、それがちょっと楽しかったり。
そして七草くんのもとに現れた魔女が、秋山とは違い、捨てるだけでなく拾う選択肢を提示したことで、ふと、七草くんは幼い頃にも階段島を訪れていた、ということを思い出したり。
 
そして、安達さんが語る魔女像が正しいのであれば、堀さんが善い魔女でいることが自分自身の幸せだって、心の底から信じるしかない、のだとしたら、その行為や思いに終着点はあるのだろうか、と考えてしまう。
 
 
 
 
 
それから。
 
階段島で生活する七草くんと真辺さんは、そのままふたりでいることを諦めてしまった、現実世界の2人を諦めきれない様子でしたが、自分を手放したのにはもちろんそれぞれ理由があって。
 
 
この物語を読んだ上で私が感じたことは、ふたりはとても不器用でとても似ている、ということ。
まるで鏡写しのよう。
左右反対でぴったり重ね合わせることは出来ないけれど、本当にそっくり。
どうしようもない自分の「現実」の何かを埋めるために、「理想」を相手に見出している。
ただ、そのことにお互い気づかないでいる。
傷付いて欲しくない人を傷付けてしまったことに、ひどく、傷付いている。
そうやってひとりで傷付くことが何より相手を傷付けていることに気が付かずに。
 
 
最後の最後に、真辺さんが静かに涙を流して「捨てた」理由を語る場面。
なんだかとてもきゅっと、なった。
 
真辺さんは一途に七草くんの背中を追いかけ縋っていて、その甘えを、七草くんの迷惑にならないように捨てなくちゃいけないんだと決意した思い。
悩んで悩んで、それでもわからなくて、運命めいたものに頼りながらも決意した思い。
そう決意したのに、今ではひとりではどうしようもなくて、七草くんに頼ることが正解だったのではないかと思えてしまう。
 
とても泣きたくなった。
悲しいとか寂しいでもなく、実際に涙を流しそうになったわけでもないけれど、行き場のない何かを吐き出すために、泣きたくなった。
……だから、きっと、真辺さんも静かに涙を流したのかな、と思える程に。
 
 
それは信仰ではない。今はもう、彼女の不変も、完全性も望んではいない。ただ、ポケットにハンカチが入っていないのが恨めしい。どんな形であれ、明日にはこの子が笑っていて欲しい。
 
きっと、その真辺さんの涙は、七草くんにとって許すことの出来ない涙だったのかな、と思います。
真辺さんが変化してしまう、ということより何より、真辺さん自身が静かに涙を流すことは、きっとあってはならない。

 

汚れた赤を恋と呼ぶんだ。きっとそうだと信じるんだ。だって、ほら、こんなにも、彼女の涙を拭き取りたい。
 
汚れた、と言ってもきっとそれは、悪い意味ではないと思うのです。
以前に抱いていた信仰とも言える綺麗すぎる思いと比べ、手垢にまみれて通俗的で身近な感情を恋と呼ぶんだ。
痛みを伴って、「恋」というラベルを貼った。
停滞を望んでいた今までから、初めて変化を受け入れて進んでいこうとしている。
プロローグでも七草くんが語っていたように、一連の物語を「恋」とラベリングすることの強引さも含めて、きっと、「汚れた」なのだと思います。
 
 
 
 
 
 
 
 
そして気になる次回以降。
ただ、今回真辺さんの気持ちを知った上で、階段島に生きる真辺さんの気持ちの行き場がとても心配になってしまう。
きっと、七草くんが階段島に真辺さんがいることを許せない、と感じたように、真辺さんも七草くんが階段島にいることが許せないと感じるのだとしたら。
 
現実世界のふたりは、ようやく苦しみを抜けて一緒に愚かでも進んでいくことを選んだのに、階段島の七草くんが真辺さんがお互いに、もとに戻ることを望んだとしたならば。
 
現実世界のふたりも、階段島のふたりも、どちらも傷付くことになってしまう。
 
 
第4作目は、2016年秋刊行予定ということで、とても待ちきれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
前作についてはこちら。

 

 

 

 

 

 

 

 

余談ですが、発売前にタイトルを見て作品に思いを巡らせたのと雰囲気が少し似ていたのがちょっぴりうれしくて。

 

七草くんと真辺さん自身がその思いを抱くことになる、とは全く予想していませんでしたが。

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