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ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『サマー/タイム/トラベラー2』

感想 ハヤカワ文庫JA 新城カズマ

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サマー/タイム/トラベラー2』  新城カズマ

サマー/タイム/トラベラー2


前回(『サマー/タイム/トラベラー1』 - ゆうべによんだ。)に引き続き、今作で完結となります。

まず、読み終えてひとこと。
これ、めちゃくちゃすきなタイプなやつ!
「綺麗」な感情に弱いのかもしれません。

それから、シリーズ通して読んだことのない時間SF作品の名前がたくさん出てきて、すごく興味惹かれる、ずるい。

2巻の表紙の少女は、今作のヒロインである悠有なのですが、浴衣の絵柄がジャック・フィニィの『ゲイルズバーグの春を愛す』の表紙であると、作中で知り、思わずにやり。
(ジャック・フィニィの名も、『ゲイルズバーグの春を愛す』も、今作で初めて知ったので思わず読みながら検索してしまいました)




完結した小さな町でほんの数秒未来へ飛び越える能力を得た少女、悠有と、そんな少女にそれぞれ様々な思いを抱く高校生たちの物語。
能力の使い方、行く末、というよりは、悠有の周りの人々の感情の動きを中心に描かれていた点がとても印象的でした。

ほんの数秒ではあるけれど、連続してコントロールできるようになれば、悠有はひとりでどんな未来へも行くことができる。
そんな能力のことが、小さな町で燻る高校生の目にはとても残酷な能力に映ってしまう。

なんとか「待った」の一言をかけたくて遠回りに手を尽くすけれども、悠有はひとりで未来を見据え、前を進むことを止めない。




※内容に触れています。未読の方、ネタバレを避けたい方はご注意ください。






中でもすごく切ない、というか私の好みだったシーンが、次第に自分でコントロールできるようになり、悠有がひとりで反射的ににわか雨を避けてしまったことを主人公である卓人に謝る場面。

「いいよ。べつに」
そいつは、夏のあいだにぼくがついたたくさんの嘘の中でも、最大級の大嘘だった。

もちろん、自分だけ濡れずに済んだ悠有を、心の中では責めていた、ということではない。
きっと卓人は、当たり前のように一緒にいた幼馴染の悠有がひとりで「未来」へ進んでいくことに、ひとり勝手に傷ついている。
例え卓人が泣き喚いたとしても、悠有はひとりで未来へ行ってしまうということを知っているからこそ、次第に能力を操ることができるようになっていく悠有との間に開いていくばかりの大きな隔たりを感じてしまう。

そうなって初めて、一抹の苦みや焦りを感じて初めて、「恋」という文字がふわりと浮かぶ。



卓人に限らず、その他の仲間たちも言葉にせずとも悠有に複雑な思いを身勝手に託している。
そうして思い通りにならないことにひとりで焦りを感じている。

「大人」になってしまえば「若さ」とひとことで言い切ってしまうような、登場人物たちの屈折具合が刺さって抜けない。





それでも結末は、ちいさく綺麗で。
当たり前のように宇宙に進出して未来はきっともっと素敵で便利で。
そんな風に悠有が夢見ていた素敵な未来に追いつけるように、未来へ進み続ける悠有のために。
どうにもならないことに身を焦がして、足を止めている場合ではなくて。




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