表紙イラストが片山若子さんということもあり以前から気になっていたこの作品。
ちょうどサイン本を手にする機会があったので、読んでみることにしました。
事故に遭い両親と死別してしまった少女、灯(ともり)。
とあるお盆に、両親のお墓に盆灯籠を供えようとする道中物腰落ち着いた正造と名乗る少年に出会う。
その年以降、毎年お盆の時期にのみ灯と正造は出会い、心を通わせていく。
- 作者: 緑川ゆき
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2003/07/05
- メディア: コミック
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同級生の灯が正造に思いを寄せていると気が付きながらも、そんな灯が気になって仕方がない清水くん。
あんたの行くその先に未来なんて……ないんよ
正造のもとへ向かおうとする灯に対する、清水くんのこのことば、物語の中でとても鋭利に光ってぞくりとしました。
恐怖とか憎悪とかそういうのでなく、はっとする感じ。
そして最後の最後でがらりと変わる物語の全容。
※以下、物語の結末に触れています。未読の方、ネタバレを避けたい方はご注意ください。
まずは、清水くんがこの世のものではないものの姿を見ることができるということ。
私が気になるのは、灯の死期と学校の屋上から飛び降りた事件との関連性。
精読すればより鮮明になるのかもしれないのですが、物語の前半で灯によって語られる場面では、灯が既に生きていない、としても不自然でないように描写されています。
まずは、果たして屋上の事件と灯が関係あるのか否か。
そして灯の死期として考えられるのは、
・両親と共に亡くなっていた
・事故では生き延びたものの、清水くんと会う時点では亡くなっていた
・正造を追うように亡くなった
の3つ。
……私の中では、2番目のパターンなのかな、と思っています。
幼い頃から、正造の出会いから灯が心身ともに成長していることを考えると。
物語全体通しての雰囲気を楽しむのに、瑣末ごとであるようにも思えるので、あまり真剣に頭を悩ませていない、というのもありますが(笑)
きっと清水くんは置き去りにされてしまった。
他人に打ち明けることもできず、どこにもやり場のない感情がずっと燻り続けている。
人柄として、というより、存在が優しかった灯の面影を町の中に探し続けてしまう。
その季節が来るたび、いない人を、いなくなってしまった人のことを身近に思う、その感じがまさにお盆にぴったりのようで。