『水族館ガール』 木宮条太郎
※内容に触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。
水族館好きな私にはたまらない、水族館もの、すいぞっかんがーる。
現在、クラゲで有名な山形県の鶴岡市にある加茂水族館が気になる私……。
ブログのユーザーアカウントやTwitterのアカウントのサムネイル画像にも使用している通り、海獣(海棲哺乳類)が愛らしくてたまらないのです。
ちょうど昨年(2014年)の夏、シャチを観に名古屋港水族館へ足を運んだのですが、姉妹や親子が寄り添って泳いでいたり、トレーナーさんに指示されるでもなく末っ子が興味ありげにプールから身を乗り出したりする様子がたまらなくて……。
本当ならば、家族4匹揃った姿を観たかったのですが、残念なことにその年既に父親のビンゴは病気で亡くなってしまっていました。
名古屋港水族館に来る前に飼育されていた、鴨川シ―ワールドでも姿を見たことがあるということもあって、ネットニュースで訃報を知った当時は、悲しい気持ちになりました。
本作にシャチは登場しないのですが、市役所から水族館へ出向を命じられた主人公の由香がイルカの飼育に悪戦苦闘していく中、あるシーンのある事実に、ふとビンゴのことを思い出しました。
老衰であれ、病気であれ、
ほとんどのイルカは最期、泳げなくなって、溺れてしまうということ。
少し考えてみれば当たり前のことではあるけれど、自由に水中を泳いでいた彼らの最期は力なく水底に沈んでしまう、と思うともの悲しい気持ちになってしまう。
ほんのり、白河三兎さんの『プールの底に眠る』の冒頭の、イルカの墓場の話を思い出してしまいました。
文字通り、きっと彼らは苦しみながらプールの底に眠る。
本作でもイルカの仕草がとてもキュートに描かれていて、何度もイルカ飼いたい! と思ったのですが、
(森見登美彦さんの『ペンギン・ハイウェイ』を読んだときにも、ペンギン飼いたい! と思った私……。)
水族館として水族の命を扱うということと、お客さんとして私たちが見る世界とのギャップに、ページをめくる手を止めて少し思案してしまいました。
結果、飼いたいけれど飼いたくない。
けど、イルカやシャチと泳ぎたい……。
登場人物の水族館に対する考えが立場によって本当に様々で、きっとどれも正しいのだけれど、それだけでは立ち行かない。
だから彼らは、時には本気で言い合いもする。
施設としての水族館の立場、お客さんのニーズ、生き物に対する扱いの姿勢……。
小さなころから家族に連れられてはデジカメ片手にはしゃぎまわっていた私ですが、そんな空間を提供するのにもいろんな苦労や工夫があったのですね。
知識を提供する博物館的な役割に徹するのか、エンターテイメント要素を含んだテーマパーク的な要素に寄せるのか、運営を安定させるには……と考え始めると。
この本を読んだうえで、もう一度水族館に足を運んでみたいです。
この小説に書かれていることが真実だとは限らないけれど、もう少し今までとは違ったまなざしを水槽に向けてみたい。
待ってて、すいぞっかん!