七月隆文さんの作品を読むのは、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』に次いで2作品目になります。
今作は電撃文庫から刊行されたデビュー作の『Astral』を加筆改稿したものだそうです。
……ついさっき知ったのですが、七月文隆さん、『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』も書かれていたんですね!
何度か作品のタイトルは目にした事があったのですが、著者名まで気にかけた事はなくて。
本読んでいく中で、見知った作品と作品がつながる感じ、とてもわくわくしますよね。
事故をきっかけに幽霊が見えるようになった明の元に、しんでしまったはずの幼なじみの桃香が姿をあらわす。
桃香自身はしんでしまったことを飲み込み切れず、明も桃香と一緒にいる空気がとても懐かしくてこのままでいいのではないかと思い始めてしまう。
それでも、桃香が過去に亡くなっていて、決して触れることのできない存在であるということに変わりはなくて。
幼なじみの話を含め、死を受け入れきれない現世と常世に存在する人たちの間に入り、前に進むことのできるよう手助けをしていく4つの短編に加え、それぞれの登場人物のその後を描いたボーナストラックのようなお話の5編から成っています。
どのお話も切ないながらも、どの登場人物も最後には前を向けるような、何が心残りで死を消化しきれなくて、どうすればそれを解消することができるのか明くんと少女たちの霊が真剣に向き合う様子描かれています。
未完成の絵が、友達とのすれ違いが、陸上大会のリレーメンバーの選考が、宙ぶらりんのまま急に会えなくなってしまった少女たち。
現世に生きる人たちはどうしようもなく放り出された問題を目の前に成す術はなくて。
死というのはいろんなものの時間を止めて置き去りにしてしまう。
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を読んだ際にも思ったのですが、主人公の明の感情の描写がとてもフラットな印象を受けました。
……もっと、どこにも行けないような切なさの方が私好み、と言った方が正確ですね。
いい意味で飲み込めないひっかかりを覚えながら、主人公の気持ちを考え、私なら、と照らし合わせて読むことができました。
辻村深月さんの『ツナグ』を読んだ時にも思ったのですが、きっと親しい人の死を消化しきれない中、その人の影やかけらを感じさせるような出来事が起こったら、一層引きずってしまいそうになる。
例えそれが善意からくるものであれ、きっと、やめてよ、と思ってしまう。
ただでさえぐるぐると巡って、なんとかしても自分ひとりでケリをつけなきゃと思っていたのに、やめてよ、と。
私はまだ今回の小説のように、親しい人を突発的に亡くしたことはないので実際の感情動きはわからないのですが、きっと、そう思う。
逆もまた然り。
私が急逝したとして、親しい人の顔を見たいかと言うと、多分、見たくない。
死に切れない、ときっと思ってしまう。
そんな風に大なり小なり登場人物の思いや行動にひっかかりを感じながらも、
理解出来ないし、私には真似できない、と思いながらも、
やっぱり登場人物たちにとってしあわせな形でお話が終わって欲しいと願ってしまう。
小説のお話だからこそ。