ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『二度めの夏、二度と会えない君』

『二度めの夏、二度と会えない君』  赤城大空

二度めの夏、二度と会えない君 (ガガガ文庫)


アニメ化した『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』と同じ著者さんの作品。


タイトルとか表紙とか帯とか、雰囲気に惹かれて。



特に帯。

——好きだなんて、言わなければよかった。
せつない小説好きの私、キャッチ。



刊行当初から私の中で存在感を放っていながらも、手に取ろうかどうか迷っていたのですが、なんていうか、夏が来たので……つい……。





主人公の篠原智は森山燐への告白をなかったことにしたくて、二度めの夏を繰り返すことになるのですが、思いを巡らせる余地があって、しばらく余韻に浸りながらゆるゆるといろいろ考えてしまいました。


お話の構造ではなくて、思いを告げられた燐の気持ちについて。





※内容に触れています。ネタバレを避けたい方、未読の方はご注意ください。




いわゆる一度めの世界で、思いを告げた智に対し、病室でそう遠くはない自らの死を悟る燐は今までに見せたことのない程拒絶を示す。

燐の死後、後悔の念に押し潰されそうな中、智は自身が燐と出会った時期まで戻されていることに気がつく。

智は最後の最後で、燐に辛そうな表情をさせてしまったことが心残りで、告白だけなかったことにし、残りは元どおりの夏を過ごすことを決める。

不器用ながらも、最初の思惑通り二度めの夏を過ごすことができた智が手にした手紙には、見覚えのない燐の文字。

「わたしもきっと、智君と同じ気持ちだったよ」







燐の文字の言う、「同じ気持ち」はきっと恋心めいたものだと思うのだけれど、そうであるならばなぜ一度めの時、智の思いを突っぱねたのか、という理由は明記されていないので、その理由についていろいろ考えてしまいました。





考える程、重要でも難しいものでもないのかもしれないけれど、私の思ったことをちゃんとことばに残しておきたいと思ったのです。

もちろん、物語の受け取り方は読んだ人それぞれなので、正解なんてものもあるはずはないのだけれど。




多分、燐はある程度自分の死を受け入れていて。
彼女のパワフルな行動にも現れていたように、いつか別れが来てしまうことは仕方がないと思っていて。

そんな中、好きな人から思いを告げられたら、きっと死にたくなくなってしまう。
長い時間かけて自分の体のことや病気のことに折り合いをつけてきたのに、なんで今更そんなこと言うの、という気持ちだったのではないかと思うととてもやりきれない。


本来嬉しいはずの智の心からのことばが燐を傷付けることになり、それにより智もひどく後悔してしまう。



こんな結末だからこそ、燐の病は意地が悪い、と私は思うのです。
思いをひた隠すことが正解であり、救いであるなんて。
漠然とした死を前に、燐も智も現実と、自分のわがままとも言える思いと向き合う勇気が持てずにいた、と思うと。






それから、自分の思いなんかよりも燐の笑顔を大切にしたいという智のまなざしがすごくすきです。

結末に関して、やりきれない、って言ったばかりじゃん、と思うかもしれないけれど、智の燐に対する思いがあまりにも尊くて純粋で。