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ゆうべによんだ。

だれかに読んだ本のことをきいてもらいたくて。

『しろいろの街の、その骨の体温の』

感想 朝日文庫 村田沙耶香

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『しろいろの街の、その骨の体温の』  村田沙耶香

しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)



タイトルに惹かれて。
単行本で発売された時から気になっていたのですが、文庫化されて書店で平積みされていたのを見かけたので。


さらりとしたタイトルだけれど、この作品の雰囲気はとても爽やかなものとはかけ離れている。
読み終わった今、消化不良を起こしてぐるりとしてしまう。
ちゃんと、自分のことばに落として吐き出して自分のものにしないと、自分のものにした気にならないと、落ち着かない。
何が、どの部分が、と言い切ることはできないのだけれど、手元から拾ったことばがつるりと喉を通るような、そんなやさしい話ではなかった。
少なくとも、私にとっては。

どこかで引っかかって、その場であやしい熱を帯びるような。





開発の止まってしまった停滞した空気の漂うニュータウンの中で暮らす少女の物語。
そんな街の何処にも行けない雰囲気が、そして何よりそんな自分自身が大嫌いな主人公の結佳。
同級生をどこか見下しながらも、「おもちゃ」にしたいという気持ちから伊吹にキスをして以来、伊吹に対する暴力的とも言える熱を持て余していた。

スクールカーストに翻弄されながらも、心の底では伊吹との歪な関係を武器に私だけは違うと、その秘密を取り出してはいつも舐めていた。

しかし伊吹が成長するにつれ、男女の力の差も現れ伊吹がはっきりと拒否するようになり、伊吹自身も他の女子の恋慕の対象となってしまい、はしっこから調子が狂いはじめてしまう。





容姿を含め自身に対するコンプレックスを飼い慣らせずに澱んで行く様がとても印象的でした。



中学生の頃の必要以上に周りの評価を気にする様子も、カーストの低い人たちを大袈裟に除け者にするクラスの雰囲気も、心当たりがあるような私自身過去に見てきたようなものばかりで。

値段をつける側の人間たちの、いかにも自意識過剰な様子を観察していると、ボロボロの自尊心が、少しずつ修復されて行くような気がする。 p.237

特にこの感じ。
どこか斜に構えて、それを拠り所にする感じ。
周りの人間の行動が見え透いていて薄っぺらいと切って捨てる感じ。
そんなことまでお見通しの私は、得意げに演じる彼ら彼女らよりも、優位なのだと思いがちな。

お話を通して過去の私の一面を見ているようで、「ああ、わかるわかる!」というよりか、心の、記憶の端っこをぎゅっと掴んで離さないような、どこか後ろめたい感じに共感できるお話でした。








そんな中、伊吹くんが唯一の良心といってもいいほど、無垢で鈍感で「いい子」として描かれていて、結佳に向けることばもとてもまっすぐで眩しいくらい。


最後の場面での伊吹くんの台詞。
一番嫌だったのは、谷沢がそれを押し殺して、谷沢がきっと一番嫌いなやり方で、おれにぶつけてたってこと。谷沢が大嫌いな谷沢が、おれより傷ついた顔をして、自分を傷つけてたこと。  p.304

ちゃんとその人のことを思って、こんなことばをかけてくれる身近な人がいるだけで、歪みきったコンプレックスとも、大嫌いな自分とも、少しは上手に付き合っていけそうな気になる。








街の変化や停滞と結佳の心身の成長が象徴的に描かれていて、決して派手な印象ではなく、私にとっては静かに鬱屈とした心の陰りを撫でるような。





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