早川から出ている『黒猫の遊歩あるいは美学講義』から始まる、黒猫シリーズと同じ著者さんの作品。
黒猫シリーズがすきなので(文庫最新刊読まなきゃ)、今回文庫化した花酔いロジックシリーズを手に取ってみました。
ざっくりあらすじ。
この話は、主人公の坂月蝶子が戸山大学入学後、推理研究会、もとい酔理研究会〈スイ研〉に入るところから始まります。
昔、子役をやっていたということをひた隠しにしたい蝶子は、スイ研の神酒島先輩に正体を握られる形でなし崩し的に入会することに。
酔えば理が見えてくる、という変わった理念を掲げるこの研究会では、昼夜問わず杯が交わされ、とことんお酒に酔いしれます。
実家が酒蔵である蝶子は知らぬうちに父親から英才教育(?)を受けており、本人の知らぬうちにお酒に酔わない体質に。
そんな一風変わったサークルにて、一風変わった仲間たちとともに、蝶子と神酒島先輩を中心にお酒片手にふわふわと謎と出会います。
とりあえず、わけのわからない愉快な酔っ払いが出てくるということで、読んでいてなんとなく森見登美彦さんの作品っぽい雰囲気も感じました。
森見登美彦さんの作品に出てくる酔っ払いのひねくれっぽさや偏屈さがない感じの雰囲気。
愉快愉快と酒をがぶがぶ呑む感じ。
森見作品は京都大学界隈ですが、今回は戸山大学ーーという名の早稲田大学界隈(おそらく)の酔っ払いどものお話でした。
実在するであろうキャンパスのそれっぽい建物の名前や駅周りの光景がちらほら出てくるので、界隈に詳しい人はより一層楽しめるかも、です。
サブタイトルに酔理とあるのですが、謎解き、というより淡い恋にまつわるすれ違いや勘違いを神酒島先輩がふわふわっと解決していく感じでした。
それぞれの模様が連作短編という形で描かれているのですが、個人的には最後の『雪酔いロジック』がいちばんお気に入りです。
蝶子の父親から一方的に蝶子の婚約を告げられ、顔合わせに向かう中、合宿中のスイ研と鉢合わす話なんですが、最後の最後で神酒島先輩がとてもずるい。
黒猫シリーズを読んだことがある方ならわかると思うんですが、普段は涼しい顔してするするとつかみ所のない人なんですが、要所要所でちゃんと気にかけていてその感じがずるい。
作品通して、蝶子がゆっくりと神酒島先輩に惹かれていく様子も描かれているのですが、恋の熱っぽさに浮かされる感じって確かにお酒の酔いと似てますよね。
なんていうか、お腹の底から熱が広がって、ふわっと地に足付かない感じ。
時には、痘痕もえくぼ、みたいに判断基準や価値観まで影響及ぼす感じ。
そう考えると吊り橋効果めいたもの、アルコールにもありそうですよね。
似た点で言えば、醒めた後にまざまざと現実が突き付けられるという意味でも。
森晶麿さんの作品では、そんな冷水浴びせられるような雰囲気のお話にはならないと思いますが(笑)