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『夏のバスプール』

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『夏のバスプール』  畑野智美

 

夏のバスプール (集英社文庫 は 39-2)

 

今回は畑野智美さんの『夏のバスプール』。
畑野さんの作品を読むのは、『国道沿いのファミレス』、アンソロジー『あの街で二人は: ‐seven love stories‐ 』の短編に引き続き、3作品目になります。
 
最初に何気なく手にした『国道沿いのファミレス』で一目惚れして以来、作品文庫化を今か今かと心待ちにしていました。
 
 
 
畑野智美さんの作品の登場人物のダメさ加減がすごくすきなんです。
ダメさ加減と言っても、救いようのない感じではなくて、例えば休日とかにすっかり太陽が上がり切ってから目を覚ますみたいな、ダメさ加減。
たとえ深刻な問題に直面しようとも、さらりとした態度で向き合うどこか憎めない感じの。
 
 
 
 
 
 
 
高校一年生の涼太はテスト三日目の朝、女の子にトマトを投げつけられ白いワイシャツに赤い染みを残したまま教室へ向かうことになる。
トマトを投げつけた少女の正体が同じ学年の久野ちゃんであることを突き詰めた涼太は、それ以来久野ちゃんのことが気になって仕方がない。
その後再びトマトをぶつけられたり、泳げないのにプールに落とされたりするが、親しくなるにつれ久野ちゃんが初対面ながら涼太に対して思い切った行動を取った理由を知る。
 
軽い気持ちで彼女に近付くなと告げる、久野ちゃんと付き合っているという噂の野球部員。
気まずい空気が立ち込める親友カップル。
意味ありげな湿っぽい視線を向ける元カノ。
GWに会話をしたきり不登校になってしまったクラスメイト。
 
涼太と久野ちゃんとの出会いをきっかけに、周りの人間関係に不穏な空気が流れ出す。
 
 
 
 
能登麻美子さんが朗読されている動画があるのですが、文庫発売の大分前にこの動画を見つけてから、今回の発売が待ち遠しくて待ち遠しくて。
 
小説全体の中でもこの朗読動画の場面がすごくすきで。
その中でも動画の最後の台詞。
でも、空に光っているのは、ISSではないのかもしれないし、流れ星と言って一緒に喜べば良かった。(文庫 p.181)
 
この台詞がすごくすきで何度も頭の中でリフレインしています。
この時の涼太の気持ちが、流れ星と言って一緒に喜べば良かった、という一節にぎゅっと詰まっているような気がして。
久野ちゃんの残念そうな声を聞いてちょっぴり後悔する気持ち。
喜んだ声が聞いてみたかった、嘘をついてでも一緒に喜びたかったという気持ち。
 
 
お話の流れとしては、その後豪雨とともに曖昧だった人間関係を洗いざらい浮き彫りにし、前半部分で語られていたきらきらとしていた雰囲気に影が差してしまいます。
 
その前のハイライトとしても、夏の夕暮れの中、自転車を2人乗りしながらの久野ちゃんの声を背中に受ける涼太の焦がれるようなくすぐったいような気持ちが、雰囲気が、すごくすきです。
 
ひと通り読み終えた後、朗読の音声とともにこの場面を読み返したのですが、もう、本当にたまらない。
 
 
 
 
 
ざっくりとした印象にはなりますが、
夏色の雲ひとつない空に白色のアクリルガッシュの絵の具をチューブのまま、塗りつけたみたいな。
ちゃんと夏の匂いがして、その白は鮮やかに映えてすごく眩しいんだけれど、はっきりとした剥き出しの粗みたいなものもそこにはあって。
そんな感じの小説でした。
 
 
そしてちょっぴり夏が待ち遠しくなりました。
 

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