(以下、シリーズ読んでいないと分りづらい内容になっています。あしからず。)
シリーズ三作目!
もうひたすらに綺麗な言葉や結末を求めて読んでいるみたいなところがあるのですが、やっぱり雰囲気すごく好きです。
パスティーシュさんの出番は相変わらず少ないんですが、登場人物の中では一番好きかもしれません。
パスティーシュさんとの会話から漂う洒脱な雰囲気がすごくいい。
今回もプロローグやエピローグにだけ主立って登場するのですが、巡り巡って帰ってくる場所、としてのパスティーシュさん、と考えるとなんだかすごく落ち着くのです。
今後もしかしたらお話に大きく関わってくることもあるかもしれない、と個人的に思っているのですが、その時はどうか安らかであってほしい、と勝手に願っています(笑)
そして今回の物語の序盤で前回までは地縛霊として海から動くことのできなかったノゾミが、ユキが見た不思議な夢を介してユキと行動を共にするのならば、どこへでも行き来できるようになります。
そのせいかユキもノゾミの存在や声をしっかりと認識できるようになります。
いくら見知った幽霊とはいえ、これからユキの私生活には必ずノゾミが付き添うことになり、そのことを「幽霊にならなければこんなことには」と負い目に感じるノゾミに対するユキの言葉がまずはかちっときました。
生まれてこなかったら苦しまなかったのに、とか。好きにならなかったら失恋しなかったのに、とか。地球から人間も恋愛もなくなっちゃったら、そっちの方が悲劇だよ
p.22
読んでいてなるほどー、と深いため息ついてしまいました。
内容もすごくきれいなんですけれど、何より自分自身に負い目を感じている相手に対してさらりとこういう言葉をかけてあげることって実際すごく難しいことだよね、と。
あんまり綺麗な小説を読んでいると、咄嗟に適切な言葉が出てこない現実がちょっぴり嫌んなる時ってないですか?
特に飲み会がある時とか、好きなことを伝えるにも何を話すにしても、つい勢いに任せて言葉が多すぎてしまうことがあって、帰り道に一人で反省することが多々あります(笑)
誰かが何かに悩んでいる時も然り。
根本が解決しなかったとしても、その人自身を言葉で救ってあげたい、とは思うのです。
今回は雨坂さんとは別の小説家、里見青からとある絵を探してほしいという依頼が舞い込みます。
調査を続けていくうちに里見青彼女自身の過去や作品について深く触れることになるのですが、彼女の叔父である書評家のカラスさんが今後物語に大きく関わってきそうな予感。
どうやら一作目から長く触れられてきた「紫色の指先」について何かを知っていそうな感じです。
そして今回も見事に綺麗な終わり方をします。
まとめちまえば、シンプルな結末だ。お姉さんも、それからお祖母さんも。みんな、君が大好きだったってことだ
p.288
大部分は小説の影響を受けているのですが、私もこんな風に好意を抱きたい、と思うのです。
前にもどこかで書いたと思うのですが、例えば異性に抱く好意であったとしてもお洒落な言葉で飾った恋愛感情、というよりシンプルに「大好き」という方がしっくり来る気がするのです。
河野さんの「北野坂探偵社」シリーズの一作目や『いなくなれ、群青』の主人公七草のように、ありきたりで平凡な日常を守ってあげたいし、別に私自身が守る必要はないのだけれど、最低限の保障にはなってあげたい、大丈夫だよってまなざしをあげたいのです。
大丈夫だから、行っておいでよ。
こんなことで悩んでいて欲しくないんだ、ちゃんともっとあなたが思う前向きなことに時間やお金や情熱や愛情を注げることがいちばんなんだ。
みたいな。
限りなく私自身のエゴで、ある意味、その相手にはプレッシャーなのかもしれないけれど。
このシリーズの前作についても感想を書いているので、よろしければ足をお運びください。